市川市の築十数年の1kに家賃6万円を払いながら一人暮らしをしている48歳の看護師の方が、肩書きを偽りiPS人体初臨床
という記事がここ2,3日の朝刊、夕刊各紙の1面を飾っています。アメリカの有名大学客員講師、東大特任教授というと
一般的にはすごい方と思われるでしょう。しかし、このご本人は、それが目的ではなく「医学博士号取得」が目的なのかも
しれません。いずれにしても読売新聞は、1か月ほど前から当人と面談し10月に入ってからは6時間もご本人の取材に
時間を割いたにも関わらず、こういう根本的な調査を惜しんだ為に、大きな代償を払うことになるようです。大手新聞社としての
信用の失墜と言えます。そもそも医者は医師国家試験に合格しないと医療行為は出来ません。その後大学院へ行って
更に専門的に極めれば、そこでようやく医学博士号が取れるというもの。しかしこれは医学博士の90%の人。残り10%は
医学部卒の医者でない方も、論文博士として「医学博士号」を取得出来るのです。そういう方が日本には10%います。
素人向けには箔がつくので、薬学系、その他工学系、または文系の人も仕事をしながら、もしくは医療関係従事者も
医学研究科に研究生として在籍して論文誌への投稿をしたり、学会で論文を発表したりして認められれば博士号の申請は
出来ます。
今回の森口氏は、看護師資格でありながらも医学博士号取得に向けて積極果敢に動かれたようですが、何かを見落として
いたように思えてなりません。そして世の中、決して甘くはないのです。嘘の上乗せを繰り返してワープが出来るのはゲーム
の世界だけと思った方がいいでしょう。 パソコンの前で虚像を膨らませ、大手新聞社の記者を言いくるめた先にあるものは、
断崖の先に突き出たレールだけなのですから。 アパートの大家さんに東大教授になったと伝えてしまったりすると、それこそ
後戻りは出来なくなっていたのでしょう。レールの先まで車輪が廻ってしまったあとは奈落の底に落ちるしか道はないのです。
この70歳の大家さんが気にかかることは「何か嘘をつく必要があったのか?」ということと「空き部屋のこと」なのかも
しれません。しかし、この大家さんも長らく生きてこられる間に、自身のコメントが新聞紙面に掲載されようとは想像もでき
なかったことでしょうが、唯一それだけは森口さんの功績だと、認めてあげてもらいたいものです。今回の件で真面目に
働く看護師の方々や、医療従事者で論文博士号の取得を真剣に目指している方々への影響は少なくはありません。但し、
果たして今回の件において森口氏に罪があるのか非常に微妙です。この話を持ちかけたのは森口氏、しかし、それを
真に受けて掲載したの読売です。私は寧ろ、公正な情報を適時に世に知らしめる役割の読売新聞社には大きな落ち度が
あって、この点は大いに社内外で追及がなされるべきだと思っています。