緊張感が漂う会場に集まる選手たちの眼は真剣だろう。
真剣な眼差しはカッコいい。
ただ試合には運がないと勝てない。
多くの出場者の中で10月3日は誰に運が舞い降りるだろう。
私はそんな事を思いながら、ここ2週間、選手たちを眺めて来た。
緊張感から足がすくみ、心ここにあらず。手が僅かに震え口が渇く。
順番通りに名前が呼ばれコートの真ん中に立つ。もう逃げられない。
審判5人は高段者。10個の眼は誤魔化せない。ただ1人、凛とした
空気の中で道着の擦れる音を頼りに型をやり終えねばならない。
足の裏が妙に汗ばんでマットを掴みきれない。指先まで整えるなんて
出来るもんじゃない。血管は蒼く弱々しい。呼吸は平静を装ってるのが
バレバレだ。もうダメだ。震える指先で硝子細工なんて創れっこない。
こんな思いの中で一人一人が練り上げた型をうつ。それが型の全国大会だ。
征遠鎮を打ってみる。
真剣な1分50秒。
世界で一番長い1分50秒。
そんな1分50秒に年輪を刻もうとしている君。
一瞬に賭け、チャレンジする君に強運が舞い降りないはずはない。