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私が空手を教えているのには、いくつかの理由があります。 一つはスパーリングの重要性を伝える事。そしてもう一つは


負けない心を育むこと。ですから身体が大きい人が勝つ空手ではなく、心が強い人が勝つ空手でなくてはならないのです。


それを噛み砕いて言うと「文武両道」です。 武道に長けているのみなら勉学に勤しむ心が備わっている子供達を育成する


ことに空手を教える価値があると考えています。 そのような観点で空手指導をしている中で子供たちのご父兄方も参加


されるようになり、大人の方々への指導も行うようになりました。今日4月29日の稽古では子供達というよりも大人のスパー


リングに重点を置いた稽古をやりました。 最近の極真道場の傾向はソフトスパーリングになりつつあります。以前から


私はそう感じてました。 しかし、それでは、どこかの局面で(試合、もしくは強い後輩=高校生、またはやんちゃなオヤジ)


が現れた時に、アタフタ、ビクビクしてしまうのです。 極真では先輩である以上、プライドを持たねばなりません。


やすやすと後輩にしてやられてしまうようでは恰好悪く、自分の居場所が道場で無くなってしまい、気が付いたらいつしか


辞めていたという事態に落ち着きます。 その方は、意識する、しないに関わらず、それ以降「逃げることを覚えた」生き方


に安住することになります。 それは避けねばなりません。 子供達が様々な試練に直面するように御父兄方も大なり


小なり、そのような場面にこれからも出くわすはずです。仕事の場、世間一般社会において、そして道場においても。


私自身、過去何人も「逃げる人」を見てきました。 


ある審査会の組手試合(4級以上はスパーリングではありません)で、他の道場の先輩を相手に、あまりにもボコボコ


にやっつけてしまった為に、その方は結果として昇級したにも関わらず試合の恐怖からそれ以降、道場に顔を出さなく


なってしまったと聞きました。別の審査会の組手の試合でも30歳台のマッチョマンが (この方も別の道場の方でした


ので初めての対戦) 我が物顔でスパーリングをやっていたので、組手の試合では、もちろん、またしてもボコボコに。 


その方はポニーテールにした長髪にマッチョマンですからみんな試合をするのを嫌がってました。当然です。私も最初


は対戦しないように願ってました。しかし、自分は強いんだぞというオーラを見せて、これ見よがしのマッチョの態度には


鼻持ちならない思いがムラムラ湧いていたところだったので、いざ対戦相手が自分だと発表された時には 「いっちょ、


やってやろうじゃないか」と沸き立つ思い静めながら逃げ道のない四角の試合場に出て行ったのです。 その試合は


みんな興味津々だったようです。 私も42歳頃でしたがベンチプレスは130kgは挙げてましたので、ポニーテールと


どっちが勝つだろうとワクワクしていたことでしょう。 試合の合図 「始め」の号令がかかるやいなや、突っかかってきた


相手の蹴りやパンチが意外に軽かったので、私はニヤッとしたのを覚えてます。その後は想定通り。一方的なパンチ連打


と蹴り倒し。しかし一本勝ちを取れなかったので私は不満でした。 今度、どこかの道場や試合で出会ったら、一本しかない


と思ったものです。しかし、その後、その人も道場に顔を見せなくなってしまったと聞いて、その道場の先生には申し訳ない


思いでいっぱいになりました。 しかし、そういう経緯があってその後の試合でも勝つパターンを体得したのだと今では思って


います。 私の頭の中は、かつて芦原道場にいた「人間凶器」のような中山猛夫先輩の姿。 それは恐ろしいスパーリング。


しかし、そういうスパイスの効いたスパーリングを経験しないと、どこかでアタフタしてしまうと思います。 


今日の大人の方々のスパーリングは、いつもと違って、ちょっとハードなものとした背景にはこういう思いがあったのです。


そのことを説明せずに稽古を始めたものですから連休3日目を軽く汗でも流そうかと思った御父兄様には記憶に残る


スパーリングであったかもしれません。 いずれ入って来るであろうヤンチャな後輩さんたちに負けない御父兄様で


あって欲しいと思うので、そういう意味での抗体を付けるためにも、たまにはスパイスの効いたスパーリングは必要


だと思っています。 何事もソフトがもてはやされる昨今、私自身がスパイスの効いたスパーリングをあとどれくらい


出来るだろうと、いつも思いながらやってますが、この大事なことも継承して行ってもらわねばならないと思っています。

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