この世はまったく一寸先が読めないとはよく言ったものです。
「意図して表示を替え『利益を上げよう、客をだまして商品を売りつけよう』とした悪質なケースはない」
「『原価率を下げろ』という無言のプレッシャーがあったという証言もある」
「会社として、必要以上に利益を捻出するよう指示したことはまったくない」
などと胸を張っていた企業トップの姿を思いだします。 この方、1980年に慶大経済学部を卒業し、
阪急電鉄入社。 その後2007年には取締役に昇格。 その後も順調に役員人生を全うされ
4年後の2011年には常務に、そして、とうとう阪急阪神ホテルズ取締役専務執行役員に就任され、
つい先日の11月1日までは阪急阪神ホテルズの社長を務められた53歳の男性。 私が最初に
テレビで拝見した時に抱いた印象は、「若くして上り詰めたやり手」でした。 まさしく飛ぶ鳥を落とす
勢いで出世街道まっしぐらであったはず。 それが10月24日の自主会見を境に天と地がひっくり返った
ような騒ぎに見舞われ、あっと言う間に辞任し肩書きが取れ、ただの人になられました。
その方の最初の記者会見では、「悪かったのは一部の社員である」 と言う説明で、企業イメージを
がらりと変える会見にされたのはご自身。 自分で自らの首を絞めてしまったようなものでした。
食材の偽装発覚は自分の所だけではないのに何故、槍玉にあがるのかと言いたかったかもしれません。
しかし、つまるところ、自主会見をしなければならなかった背景があってのことなので会社の体質の
甘さや、その他、やはり成るべくして、いや遅かれ早かれ、いずれはそうなったのであろうと思える
ような、用意不足の、あぶなっかしさがにじみ出た会見であったことには間違いなさそうです。
処世とは、いったいなんだろうと思わざるを得ません。
一に仕事を大切にすること。 二に身の回りを清潔にすること。 見えない心の塵や埃もはらうということ。
三に人の嫌う事をしない。 逆に言うと人の長所を認められる人間であるということ。
そして最後にアホになることかなと今はそう思っています。 しかし、この最後のことが意外と難しい。
自分を良く見せたいと思うし、知らない事を素直に知らないと言い難い場面もある。知ったかぶりを
したい気持ちもある。 しかしこのアホも故意にアホを演じるのは嫌味で、かえって腹黒さが目に
付いてしまう。 であれば、「つたない」、「小細工をしない」そんな人間でありたいと思う。
不器用な人生でも結構。 ドンと腹を据えて目先のことにとらわれず、 ただひたすらに拙な部類の
生き方に徹することが大事だと、今回の一連の騒動が教えてくれたような気がします。