宅急便を持ち込んで宛先を書いていたら、通りで急ブレーキと罵声が飛び込んで来た。 ぶつかった訳では
なさそうなので、そのままお金を支払って宅急便屋さんを出てきたら、また怒号と罵声が。 聞けば罵声を浴びせ
ている男性の車の前に急に割り込んできた車があったらしい。 見ると相手は30-40歳の女性。 罵声の本人は
40前後で175cm 90kgくらいの小太りで声の大きな男性。 車を停めさせて運転席に怒鳴り散らしていた。
女性はもう無抵抗で許して下さいと怯えている。 この男性、相当、腹立たしかったのか一向に怒りが静まらない様子。
夕方19時前の出来事。 服装からどこかの現場で仕事を終えて家に帰る途中らしい。 女性は何度も謝り男性は
「謝るくらいなら警察はいらない」と感情的に怒鳴り返す。 流石に手を上げるところまではいかないにしても
それは恫喝に近いもの。 女性も左右を確認せずハンドルを切ってしまったことは事故の元。 しかし、恫喝に
近い汚い言葉は聞くに堪えない。 しかも相手は同年代の女性。 そこまで言う相手ではないのは一目瞭然。
この女性が運が悪いのか、この男性に運がないのか分からない。 しかし自分がやったこととまるで同じことが
いずれ自分の身に降りかかってくるというのは世の常。 何で其処まで脅すのかと、傍らで観ていた私に気づくと
漸く、男は捨て台詞を残してその場をあとにした。
空手では、自分より下の帯の人をとことん遣り込めるのはルール違反。 しかし、逆に下の帯の人が
突っかかってきたらば受けねばならないし、その時に逃げるようなことは絶対にあってはならない。
今日の一件、女性や自分より弱そうに見える相手に罵声を浴びせることをやめなければならないのは明白。
人は外の世界に与えたことや、与えた作用と同じ力の反動を、そのまま自分の身で受ける覚悟を持たねば
ならない。 狭いプールに勢いよく飛び込むんだ時のような激しい反動が時を経て自分自身に還ってきてしまう。
ちょうどそんなもの。 プールで泳いでみると水の抵抗が大きいことと、それに抗うと思いのほか体力を消耗して
しまうことも分かる。 悪意を溜め込んだプールで泳いでいたとしたら悪意の大波を受け、 施しの心に満ちたプールで
泳いでいたら、いつもそれと同じような波の中に身を置くことになる。 どうせならそんな時間を過ごしてみたいもの。
人生に辛さや苦しみはつきもの。 生活の苦しみ、 働く苦しみ、 勉学の苦しみ、 恋愛の苦しみ、 介護の苦しみ。
順調なときは何でもうまく行く。 でもそんな春はあっという間に消えうせる。 その頂点だなと思った途端に人生は下る。
大事なのは、そこをどう乗り切るかであり、そこを堪えることが出来るのかに尽きる。
あの男性も家族を持っていたとしたら、それを背負いながら頑張っているはず。 重い荷物はたまには下ろして
休みたくなるもの。 しかし、それは決して下ろさず必死に生きねばならないと思う。 その方がこの先どう生きるかは
分からないし、また、どう生きようと私が口を出すものでもない。 ただ易きに流れ、背負うものがない男の顔には
魅力はない。 ただそれだけのこと。 この男気、わかるだろうか。