3月 2016

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昨日は長男の大学で医学部の卒業式が行われた。 その後、場所を目白の椿山荘に移して謝恩会が披かれた。 参加していたご父兄の内約7割は医者だ。 医者の奥様達の半数は和服で極めていた。 やはり日本人の女性には和服に勝るものはない。 この大学の現役111人が医師国家試験を受けたが結果は110名が合格。 1名だけ国試浪人となった。 国試は2月6日から一般問題、臨床実地問題、必須問題に分かれ3日間にわたって行われた。 その結果、その学生は必須問題で1点だけ足らなかったという。 それで今年1年を国試浪人として送ることになる。 たった1点。 されど1点だ。 一人だけ落ちたその学生も卒業式と謝恩会に出ていた。 辛かっただろう。 57歳にもなると1年の違いなんて、左程大きなものではない。 しかし25歳では人生と神様を恨むかもしれない。 たかが1点。 それが重い。 彼よりも成績の悪い人がその試験に受かっていたから尚更だ。 喜んで謝恩会ではしゃぐ若者達は彼に拍手を送っていた。 10年後、20年後、いや30年後、この学生はどういう人生を送っているだろう。 来年、彼が医者の扉を開けて一歩踏み出したとしたら、人の痛みを知った医者になるのは間違いない。 多くの弱い立場の人を助けてくれる医者になるかもしれない。 神様は、幸運を与える時には遠回りをさせるものだ。 今日、空手クラブの何人かの子供達に伝えたことがある。 「世の中、すべてこの1点差で決まる。」 「運よく滑り込んだ人生がいいとは限らない。」 「人生はマラソンだ。」 「挫折から何かを学ぶ人であるのか、挫折から人生を恨む人であるのか。」 「神様は可能性のある人には試練を与える」 子供達には難しい話だったはずだ。 多くは、何を言っているか分からなかっただろう。 でも、それでいい。 ただ真面目に何かを伝えようとしている大人がここにはいるのだ。

今日のこの日をどれほど待ったろう。 2月6日から三日間の試験はインフルエンザにかかっていやしないだろうか? 仕事をしながら、そして空手の稽古をしながら、ずっとそんなことを考えていた。 長男の中学入試では、志望の学校に合格するように祈った。 医学部入試では、どうぞ一校でもいいから受かりますようにと祈り 入学したら、留年などしませんようにと祈った。 しかしいくら祈ってみても勉強を疎かにした学生は留年するのだ。 神様は居ない、そう思って諦めた。 留年した翌年は、それこそ進級出来るように祈っていた。 体力勝負の三日間の卒業試験でも祈った。 どうか力を出し切れるようにと手を合わせていた。 そして医師国家試験が無事に終えられるように祈って 今日を迎えた。 第110回医師国家試験の合格発表は2016年3月18日 午後14時と決まっていた。 長男がお医者さんになりたいと言いだしたのは小1の6歳の頃だった。 振り返ると、その夢を実現するのに20年もかかったことになる。 14:02 メールが来た。 「合格してたよ」 今、長男は成田に向かっている。 オーストラリアに行くらしい。 6日前に他界した義父は今日のこの結果を知っていたのだろうか。 現在が変われば将来が変わる。 だから今を変えるんだとこの空手クラブの子供達にも言って聞かせてきた。 しかし、今日のこの日を迎え、それが間違っていることに気づかされた。 現在の心境が変わるだけで、忘れていた過去の楽しい記憶も思い出されて来たのだ。 そうだった、中高一貫校の受験や医学部受験は、決して辛い坂道ばかりではなかった。 現在が変われば将来も、そして過去も変わるのかもしれない。 長男は少々回り道をしたけど、それが彼らしい。 多少の寄り道があればこそ、より人間味のある人生を築いてくれることだろう。 春、門出の季節がようやくうちにも来てくれた。 今日は新たな未来と忘れていた過去に乾杯だ。

春三月は何かと忙しい。 卒業式に、転勤、転居。 桜が咲くころの入学式の準備。 制服がある学校は、その採寸もやらねば。 涙あり、笑いありの梅の季節は気忙しく過ぎて行く。 そんな中、お世話になりっぱなしの義父が昨日3月12日朝7時過ぎに肺炎の為、息を引き取られた。 義母は4年前のロンドンオリンピックが開催していた8月にお別れしている。 膠原病だった。 この二人なくして長男の医学部の卒業はなかった。 その長男の医学部卒業式まであと2週間を残すところだった。 経済的に援助してくださった義父も義母も今はこの世にはおられない。 空は、曇って肌寒かった。 昨日の稽古で出くわした子らの顔を観ながら、その子たちの10年後の顔を覗き込んでいた。 真っ当であれよ 辛抱強くあれよ 運に恵まれる子であれよ そう思いながら幼き子らの顔を観て居たら、あっという間に時が過ぎた。 今日は空手の演武会。 あれをこうやって、これはこうやってと考えていたことの半分も整理がつかないまま 当日を迎えてしまった。 困った。 自分の演武をどうするかまで正直なところまったく頭が回ってなかった。 そんな折、一本のメールをもらった。 見ると久しぶりの名前だった。 聖光学院3年生。 現役で東大理科1類を受験した秀才。 メールは無事合格した報告だった。 昨年夏以降、東大模試はずっとA判定をキープしていたからたぶん大丈夫だろうと 思ってはいたが、実際に結果を聞くと安堵する。 彼は昨年9月まで空手の稽古を続けながらも、勉学も怠らずいいバランスを維持したと思う。 10月から約5か月の集中勉強で東大理科1類合格だった。 すべてはバランスのようだ。 空手に偏っていては相当なプロになる以外は飯が食えなくなってしまう。 だから稽古の終わりには、必ず生き方、勉強の仕方の話をする。 幼稚園児や小1には飽きてしまう話だ。 指を嘗めたり、ゴソゴソしたり。 それもしようがない。 見ていてそう思う。 でもいずれ分かる時が来るから、その子たちの成長を見守らねば。 人の心には、一人一人の花があって、形や色は様々だ。 大事なのは、その花を啓かせることなのだろう。 誰しも、精一杯に生きようとする力があって、力いっぱいに咲き誇ろうとしている。 その蕾を見出し、開花させねば。 そんな思いを胸に抱いて、いつも子らを看ている。 春は、何かと忙しい。

春を見つけた。 庭のあじさいに蕾が見えた。 春が来た。 夏が過ぎて、秋になったら、冬が来ていた。 そしてまた、春を見つけた。 ずっと同じことを繰り返してきた気がする。 でも去年の春より、庭のあじさいは大きくなっている。 1年生が6年生になり、2年生が中学1年生になる。 この5年間で子供達も大きく成長したようだ。 風邪を引いて熱を出して、怪我をしたり、泣いたり、笑ったりしながら大きくなった。 でも、せっかく医者になっても、医療報酬詐欺で逮捕された女医が居たり 進路指導の面談を廊下で行い、間違った調査資料を元に、1人の中学生の 人生を終えさせた女教師が居たり そして陸前高田市で卒業式を待つ小学校6年生が居たり 自宅も職場も失い、家族を失い、どん底を味わった人が居る。 人生のどん底を味わった人と人生の快楽を謳歌した人が居る。 どっちが良かったんだろう? これから先を見ると、どんな5年が良かったんだろう? 一体全体分からない事ばかりだ。 ただ間違ってない事がある。 それは人間、どん底を味わって初めてDNAが覚醒するという事だ。 大事なのはこの身体の細胞が記憶している100万年前のホモエレクトスからの 経験則を呼び覚ます事かもしれない。 この短い人生でそれが出来たら、そこから人生は変わるだろう。 ジャワ原人が北京原人に変化する過程で ネアンデルタール人がホモサピエンスに変化して行く中で それぞれが経験して来た飢餓や外敵から逃れて来た記憶が細胞の一つ一つに 深く刻まれているはずだ。 それを覚醒するきっかけが、どん底に落ちることだ。 せっかく受け継いだこの100万年の間の遺伝子を眠らせたままでは勿体無い。 DNAのスイッチを入れるのは自分自身だ。 さあ、スイッチをオフからオンに切り替えようじゃないか? どん底に怯えてたまるか!

健康を志向し、服装や美容に心がける人は多いのに 教養をつけ、心を鍛える事に熱心な人は少ない。 稀に生まれ持って嘘つきな子供がいるのかもしれない。 でも普通は頭で計算して物を言う子供はない。 思った通りの事が口から出てきてしまうのが子供だし、それが可愛い。 だからよく家庭内の事が子供から伝わってしまう。 「うちのお母さんは、よくお父さんと喧嘩してるし、朝はなかなか起きてこないの」 単純に思った事を口にして、外聞をはばかる事はないのが子供だ。 しかし、大人になる過程で人は嘘を覚えて、それを上手く使いこなすようになる。 保身の為なら見え透いた嘘もお手のものだ。 思っている事と表現された事とは丸っきり違う人もいる。 計算高いのは達人の領域だ。 成就した人格の持ち主と、そうでない人。 その違いは付き合ってみると見分けがつくものだ。 澄ました顔をしていても、一瞬の動作や言動でお里が知れてしまう。 それは勉強によって身につくこともある。 本を読んで身につく事だってある。 他の人の言葉を黙って聞いているだけでもいい。 面倒な事を避けず、丁寧にやってみるだけでもいい。 波乱に明け暮れた人生でも、それが苦労とは思わなくなってきたら そして愚痴や、恨みつらみを言わなくなっていたら 「ああ、面白かった」という人生を送っているかもしれない。 よもや「幼稚園落ちた日本死ね!!!」などという言葉は聞きたくはない。 この方、匿名ブログで話題になった方で、そのあとこう書いていた。 「何なんだよ日本。」 「何が少子化だよクソ。」 「ふざけんな日本。」 「まじいい加減にしろ日本。」 言ってることや世の中の矛盾は良く分かる。 ママ達の気持ちを思うと同感だという人も多いだろう。 しかし、この言葉のトゲトゲしさは如何なものかと思う。 そして日本がそんなに嫌ならば もっと良いところを探し求めて生きて行くしかなかろう。 果たして日本よりいい国があると言うのだろうか? 幸せってなんだろう。

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