リビングの角に本が山ずみになっていた。
見ると長男が買っていた医師国家試験用の問題集だった。
綺麗なままだった。
勉強した形跡はない。
今年の2月の第110回医師国家試験を何とか乗り切り3月18日の合格発表を
迎えて、ようやく、うちにも春が来た。
長いトンネルだった。
その長男は今は藤沢の総合病院の研修医。
家にはいつ帰ってくることやら。
ましてや、空手をやる時間などあるはずもない。
この空手クラブにも医学部を目指す子供達がいる。
親御さんの中には、ある病院の循環器系内科のお偉いさんがいたり
小児心臓外科の先生がいたりする。
子供達には、勉学と忍耐力を身に付けて欲しい。
医学の道のみならず、研究者や教授、あらゆる道では、じっと耐える力が問われる。
その忍耐力を備えるために、ここでは子供達に空手を学ばせている。
千葉大学医学部の偏差値は71で東北大学、名古屋大学医学部の次に難しい。
そして5年生ともなれば、あと1年の辛抱で卒業試験を迎え国試に挑む。
医者への道のりも第3コーナーを回ったところで、着陸まであとわずか。
しかし、世の中にはまさかという坂道がここにもあった。
11月21日、婦女暴行の罪で千葉大学医学部学生3人が逮捕された。
呆気なく夢は奈落に落ち、間際で放校の憂き目に遭いそうだ。
親不孝にもほどがある。
タイムマシンはただいまトランプが使用中。
バックトゥザフューチャーはもう諦めるしかない。