稽古前のしばしの間、6年生の子と野球をやってみた。「阪神のファンなんだよ、先生は」と言ったが、本音は長嶋茂雄選手の大ファンだ。ただ今の子供達にはそんな名前を言ってもピンと来ないだろうと思って、言わなかった。
長嶋茂雄選手は私のスーパーヒーロー。何も面白いこともなかった小学生時代に唯一ワクワクさせてくれた私の憧れだ。父親が巨人ファンで日曜日になるとテレビは巨人の試合。それが終わると兄と三人で近所の広場で野球をしていた。左利きの兄はGIANTS背番号1、右利きの私はGIANTS背番号3を着ていた。中学生の頃、「巨人の星」が最終回を迎え、高校生になると長嶋茂雄選手が引退した。信じられなかった。私の中で何か灯が消えていった。夢も希望もなくなった。
今日、相手をしてくれた子は来年中学校で野球部に入るらしい。野球部に入ると聞いて、少し嬉しかった。今はサッカーか、バスケットボールか、卓球、吹奏楽部らしい。でも野球か、いいじゃないか。どうせやるならワクワクさせる人になって欲しい。