2003年1月の新聞の全面広告にガンジーの写真とともにこう書かれていた。「善きことはカタツムリの速さで動く」ーーーガンジー。当時私は44歳だった。心打たれた広告だったので今でも覚えている。学校の成績は中ぐらいで臆病な生徒だったガンジーは並外れた道徳心の持ち主だったと書いてあった。仕事に明け暮れ、出張・出張の毎日。道徳心という言葉すら使うことを忘れていた頃だった。到底、ガンジーのようなことは出来そうにないけど、この言葉だけは何度も噛みしめて行こうと心に決めて仕事と空手に打ち込んでいた。会社では昇進・出世の波にも乗りたかったし、子供の医学部受験もうまくいって欲しかった。そんな時に、一息入れて、あたりをゆっくり眺めてみなさいと言われたような気がした。
1日一歩、3日で三歩、三歩進んで二歩下がるという歌がある。そのころの私は二歩も下がったら、悔しくて夜も眠れず、二歩の遅れを取り戻そうと必死になっていた。成功を焦っていたのだ。あれから18年が過ぎ、今、キッズ空手の保護者の方々を見ていて、ふとこの言葉を思い出した。
カタツムリの速さは見落としがちで、それでは足らなさそうに思えて、じれったく思えて、もどかしいという顔に見て取れた。ちょうど自分も三十代、四十代はそんな感じだった。子供の成長に一喜一憂し、ハラハラドキドキしてしまう。私もまったく同じようだった。しかし安心しましょう。子供たちはカタツムリの速さ成長しているのだから。